Eternal Silence
23.転移 -嵩継-
こんな時が来るのはわかっていたのに……
水谷さんからPHSに連絡を貰って以来、
オレの手は震えている。
海斗が40度の熱を出した。
それは化学療法によって、
免疫が低下した代償でもあり、
アイツ自身を疲弊させる。
一報から、
飛び込んだアイツの病室。
すでに熱に魘されて、
意識が飛んでいるアイツに
駆けつけてくれた城山さんが
対応してくれていた。
「城山さん」
「今、解熱剤入れたから。
これが効いてくれたら、
少しはラクになるんだけど……」
氷嚢を用意して、大きな血管を
片っ端から冷やしていく。
「これっ、座薬。
様子見て下がらなかったら、
これも使わないと」
オレの掌におさめられた座薬を
無造作にポケットに突っ込む。
「井津君のお母様には
連絡しておきました。
レントゲン室OKです」
病室に顔を出した水谷さんの声を受けて、
そのまま海斗を抱きかかえると、
一気に駆けていく。
オレの後には、
アイツの点滴を
持ってついてきてくれる城山さん。
そして……水谷さんがおしてくる
ストレッチャー。
「嵩継くん、一人で抱えないの。
井津君をストレッチャーに寝かせてあげなさい。
じゃないと、辛いのは井津君自身でしょ」
そうやって諭されたオレは、
言われるままにストレッチャーへと寝かせた。