Eternal Silence




「上村先生、城山先生」



嵩継の雰囲気が、
俺とふざけてた時に比べて、
一気に研ぎ澄まされていく。




「井津くん。

 大切な話があるが、いいだろうか?」





そう切り出した、主治医。
思わず息を飲みこむ。





すると隣に居た
嵩継がゆっくりと口を開いた。





「海斗……。
 
 治療を中断して、
 残りの時間を自分らしく生きないか?」





真剣な眼差しで告げる言葉。





「先日の検査で肺への転移が見つかりました。
 今日までの化学療法は、井津君にとって
 体力を消耗させていくものであって、
 血液検査のデーターを見ても、
 腎臓への負担が強すぎて
 これ以上の効果が期待できないと言う結果になりました」





告げられた言葉は、
俺の命の終わりを告げる残酷な刃。





「……後、どれくらい生きれますか?……」





そう問いかけた俺に、
主治医は告げた。





「桜が見れるといいですね」







今は梅の花が満開を見せる季節。




その時期に、桜が望めないとなると
もう俺の体は、
何時急変してもおかしくないのだと
知らされた。







「なぁ、海斗。
 院長先生が言ってくれた。

 向こうのセンターで過ごさないか?
 病気のことも治療のことも忘れて、
 好きなことしてさ」




再び告げた嵩継の言葉に、
俺は静かに頷いた。



< 141 / 170 >

この作品をシェア

pagetop