Eternal Silence
1.生まれ変わる日 - 嵩継 -
夏。
太陽が真上に近づく時間。
お世話になった、
居酒屋の二階から、
ゆっくりと荷物を運び出す。
荷物と言っても、
洋服の詰まった衣装ケースと、
医学書の詰まった段ボール。
そして……
亡き両親の位牌。
「嵩継、もう行くのか?」
「はい」
オレの名は、
安田嵩継(やすだたかつぐ)。
高校を卒業して、
医学部に進学した際、
生活をするためにと
面接を受けた居酒屋を
バイト先に選んだ。
医大に通いながらの、
バイト生活は、
厳しいものではあったけど
生きていくためには
仕方がないと諦めた。
最初の頃は、
規則正しく入れていたシフトも、
何時しか、
遅刻することが多くなり
いつ、首を切られてもおかしくないのに、
この居酒屋の夫婦はオレを
切り捨てることはなかった。
この夫婦の協力もあって、
何とか、医学生の間の
臨床実習も終えて、
卒業試験を間近に迎えたある日、
オレの人生は変わった。