Eternal Silence
アイツは
退院の当日まで、
時間を見つけては、
俺の病室に顔を出してくれた。
時に、
俺からベッドを奪って
仮眠なんかとりながら……。
ハードすぎる仕事に
アイツが何時か倒れそうで
戸惑いながらも、
やっぱり……
アイツと一緒に過ごせる時間は
楽しくて……。
退院の日が、
正直怖かった。
俺が退院すると、
またアイツとの繋がりが
途絶えてしまうかも知れない
恐怖が常に付きまとう。
それでも……
時間は止まることなどなく、
俺の退院当日がやってきた。
おふくろが
朝からやって来て、
白衣姿のアイツが顔を出す。
「よっ」
目の下に少し隈を作った
アイツが顔を覗かせる。
「今日、退院だろ。
海斗。
ご無沙汰してます。
おばさん」
そうやって、
おふくろに挨拶するものの
おふくろは、
目の前の奴が
誰だかわかってない。
「ほらっ。
おふくろ、名札見てみ。
安田って書いてるだろ。
高校ん時の、嵩継だよ。
一つ上の」
俺がそうやって説明すると、
おふくろは、
びっくりしたように
嵩継の手を握り返した。
「上村医師は?」
「あぁ、さっき来た。
退院OKだとよ。
今、会計で計算してるらしくて、
計算終わったら、看護師が
用紙届けに来るってさ」
「そうか。
昨日、当直で今日はこの後、
休みだから、
送ってく」
そう言うと、嵩継は
病室を出て、私服に着替えなおして
再び姿を見せた。
手には精算用紙を携えて。