Eternal Silence


大学で何度か言葉を交わしながら、
過ごした臨床仲間の女子が
教授にパワハラを強要されたと
泣きついてきた。

それがきっかけは、
オレはサッカーで鍛えた
自慢の右足をお見舞いし……
未来を奪われた。


パワハラをしていたと言う、
教授側のメンツもあるから、
オレの卒業に
手をくわえられることはなかった。

医師免許も見事に得られ、
医大の卒業も決まったのに、
春からの研修先が見つからなかった。

医師免をとっても、
その後の[卒後臨床研修]を終了しなければ
医師になることは出来ない。

だけど……どの病院に、
研修をお願いしても、
オレの受け入れ先は見つからない。


学生寮も追い出され、
行く宛もないオレを、
この居酒屋の夫婦が、引き取ってくれて
お店の2階に下宿させてくれたのが
今年の春。


あれから4ヶ月。

お世話になった、
この居酒屋で必死に働きながらも、
研修先を探し続ける日々を送った。


そして……運命を掴んだ。


今からお世話になる人は、
ここの店主の主治医をしていた
ドクター。


ふと食事を兼ねて、
来店したその時、
店主がオレの話をしてくれて
オレはその人に拾われた。


今日は、お世話になった
この場所を離れて
新しい未来の扉を開く最初の日。


「嵩継くん。
 鷹宮先生のところで、
 頑張れよ」

「そうだよ。
 私も亭主の通院日には、
 嵩継くんのこと探すから。

 お腹すいたら、
 いつでも食べにおいで」


それぞれに声をかけてくれた
居酒屋の夫婦に、
深く一礼をして、
タクシーに少ない荷物を詰め込むと
鷹宮総合病院へと向かった。
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