Eternal Silence

6.違和感 -海斗-



退院した後も、
アイツはちょくちょく俺の店に顔を出した。


高校ぶりに、
アイツと出掛ける町中。



あの頃は、サッカー馬鹿で
学校帰りにゲームセンターよって
コンビニで適当に唐揚げとか買って
食べながら帰宅してた俺。


アイツもサッカー馬鹿には
違いなかったけど、
申し訳程度にゲームセンターに付き合った後は
バイトに明け暮れてたアイツ。


そんな懐かしい時間を思い出しながら。


女っ気のない野郎が二人。



町中のファミレスで飯食ってる。




飯食った後は、
近くの河川敷に行って
ガキどもが練習してるサッカー眺めて。



何やってんだろうなって思える
そんな時間も、
結構、俺には楽しくて。


あの頃と違うのは、俺も今は店があるから
アイツと一緒に過ごせる時間がねぇってこと。


アイツもアイツで
研修医の仕事が忙しいらしく、
一緒に居る時でも、電話一本で飛び出してく。


約束した日も、ドタキャン上等。



しかも約束の時間を数時間過ぎてから
連絡してくることなんてザラだしな。



俺も店、始まってる時間だっての。


相手のスケジュールを考えない
アイツの生活リズムで、連絡してくるのに
時折、ブチ切れそうになる時もあるけど、
それでもアイツが此処にいる。


アイツと再会できたって
言う喜びの方がデカイ。



おふくろとも話してた。



嵩継があの病院裏のバカデカイ家で居候がし辛いって
言うなら、この家で一緒に暮らしたっていいって。


そのくらい、俺にとってのアイツは
人生の中で貴重な存在だから。


アイツと出逢ったからこそ、
今の俺がここに居る。




「海斗、昼休み今日も行くのかい?」



二階から店の調理場で、アイツの弁当を作ってる俺に
おふくろが声をかける。



「あぁ。
 嵩継に差し入れ持って行ってくるよ」

「この間、嵩継君の好きな肉が安かったのよ。
 母ちゃん、買っといて冷蔵庫のチルドに入れてるだろ。
 あんな立派なところにいたら、
 肉なんて何時だって食べれるかも知んないけど
 甘辛く炒めて持っていってやってよ」

「はいよー」



ったく。


嵩継と再会してから、
おふくろは……マジ、嵩継君、嵩継君だな。
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