Eternal Silence
海斗を育てるのに、
昼間はオレのおふくろと一緒に中華屋で働いて、
夜は夜で、飲み屋で働いてた。
海斗のおばさんは、
おふくろの夜の店の、ママだったからな。
そんな生活がたたって、
オレのおふくろは、風邪こじらせてポックリ逝っちまった。
けどアイツのおふくろさんも、数年後に肝臓を壊して
店を閉めた。
それ以来、疲れやすい無理のきかない体で生活してる。
アイツには、
オレのような思いをして欲しくないから。
「海斗~おばさん、少し休ませたぞ」
そう言いながら、階段を下りてた時、
調理場の方から
金属がひっくりかえる音がした。
「海斗っ!!」
いつもは遠慮して入らない、
海斗の聖域である調理場の奥。
躊躇う暇もなく、
開け放って駆け込むと、
調理しかけのボウルごと中身が床に落ちてる。
その隣、
固まったように動けなくなってる海斗。
「海斗、どうした?」
「なんか、膝に力が入らなくて。
歩こうとしたら、上手く動かせないんだよ。
痛くて。
体制崩して、
ボウル落としたから拾いたかったんだけどな。
床、片づけねぇと。
悪いけど、嵩継片づけてくれるか?
俺、つくねの仕込、やり直さないと」
そんなこと言いながら、
アイツはすぐに調理場へと向き直る。
すでに足をひきずることすら
出来ない状態で。
「海斗、めくるぞ」
海斗のズボンをめくりあげて、
膝をむき出しにする。
水でも溜まってやがんのか?
ここ、アイツの高校時代の古傷だしな。
あの頃にも、水抜きしてたしな。