もう一度、君と…。

「…コレで分かんなかったら、他に聴いて」

私は問題集とルーズリーフを突き返した。

「す、すげぇー…」

驚きの声が隣から聞こえた。

私はそれを無視して、自分の問題集を解いた。

「…俺の隣誰?」

コソッと耳打ちしてくる。

私は隣の隣席を見て、ルーズリーフに、
『雪道 多和』
と書いた。

…久々に多和を見た気がした。

多和は真剣に解いていて…、すぐに自分の問題集に視線を戻した。

「…雪道たお」

「え?」

読めたの?

私は驚きで隣を見つめた。

だって普通…間違えるでしょ?

「…読めるよ?…だって、知り合いだもん」

ニヤッと笑う隣。

「…君、知り合いなの…?」

私は不気味に思い、距離をとる。

「…俺は晟弥でいいよ。俺は恋羽って呼ぶから」

ニッコリと花が咲いた様な笑顔。

「…、オイ」

ドスの効いた声が、晟弥の隣から聴こえた。

「…何?オトそうとしてんだから、邪魔すんなよ…多和」

……オトす気だったの?

絶対、落せないと思うのは…私だけ?

「…やめろよ。…恋羽には…やめろ」

私をちらりと見た多和。

あの日から、初めて目が合った。

「…ふーん。…ねぇ、富村 礼子(とみむら れいこ)、どうしてるか知ってるか?」

……とみむられいこ?

「……知るかよ」

少し考えた後に、言葉を発した多和。


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