もう一度、君と…。

また…か。

私は知らぬ間に溜息をついていた。

「…礼子、この学校来たよ」

「っ…」

少し驚き顔の多和を、更に追い込む。

…なんで?

私、なんでこんなに苦しまなきゃいけないの?

「…礼子より美人だよね?…恋羽ってさ」

私の耳に息を吹きかける晟弥。

「っ!?」

私は驚きで動けない。

机の上においていた私の両手首を右手で掴まれた。

セミロングの髪を撫でられながら、微笑まれた。

私は怖くて…動けなくて…。

初めてだった。

髪を除け、首筋を指でなぞられる。

「や、やめろよ…」

弱々しい多和の声。

数学の先生はずっと黒板と睨めっこ。

目の前の百合は、伏せて寝ていて…。

晟弥が何を考えているのかわからない。

たまらなく、怖い。

唇がワナワナと震え出す。

「恋羽、怯えないでよ」

耳元で言われた言葉に、ガタガタと震え出す身体。

そして…晟弥の顔が首筋に近づいていく。

怖くて目を瞑ると、ピリッと痛みが走る。

「っ…」

晟弥の息が頬にあたっている。

「や…めて」

小さい声で言って、顔を逸らす。

「…嫌だよ。恋羽が可愛いんだもん」

私が目を開けると、すぐ目の前にあった晟弥の顔。

「っ…」

もう頭が真っ白になってしまった。

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