もう一度、君と…。

初恋相手の宝探し。


私は今、慶ちゃんと二人で電車に乗っている。

今日は普通に学校があったけど…。

お母さんに訳を話したら、
「いってらっしゃい」
って言ってくれた。

私の右手には、綺麗な花束。

左手は慶ちゃんの右手に包まれている。


「「…」」

ただひたすら電車を降りて、無言で歩く。

【精の森→入り口】

看板にはそう書いて在る。

「…綺麗だね」

私は呟いた。

…今ココに…、裕貴君が眠っている。

【山岡 裕貴】

きっと裕貴君しか眠っていない。

私はすぐに立ち止まった。

花束を供えて、一歩離れた。


私は一日で気持ちの整理をしてきた。

でも、裕貴君が渡したいモノは決して分からなかった。


「…慶ちゃん?」

「…墓をまんべんなく調べてみな?…手掛かりが見つかるから」

微笑んで、私の頭をポンポンと2度撫でて、何処かに歩いていく。

「け、慶ちゃんっ!」

私は思わず叫んだ。

「…?」

慶ちゃんは振り向いた。

「ど、どこに行くの?」

「…そこのベンチ、待ってるから」

にこやかに微笑んで、また歩きだした。

私はお線香を供えて、手を合わせる。

どうして言ってくれなかったんだろうね?

私は自嘲気味に笑う。

そして、目を閉じた。

こうすると…昨日のように思い出される。

皆は私をチームメートとして接してくれた時が…。



< 123 / 291 >

この作品をシェア

pagetop