もう一度、君と…。
5つの影。
「…泣くんなら、励ましてやろうか…?」
私は振り向かずに、涙を拭った。
「…間に合ってますんで。他を当たって下さい」
付け足して、
「…そんなに軽い女じゃないんで」
ナンパは慣れてる。
…いつもなら、『彼氏がいるんで』を最初に付けるんだけど…。
流石に無理がある。
多和は、きっといい迷惑だ。
「…強いね。彼氏は?」
「…今さっき、別れて来ました。私は十分に裕貴君に励まされたので…」
立ち上がって、5つの影を見て…驚いた。
「…慶ちゃん?」
切なそうに立ってる慶ちゃん。
「…別れたの?」
「…うん。もう十分だったから」
私は誤魔化すように笑って、慶ちゃんを見た。
「…涙、止まってないじゃん?」
フッと笑って、私の前にきて拭ってくれた。
ーードスッ
後ろから急に抱きつかれた。
「きゃぁっ!?」
私はそのまま、前にいる慶ちゃんの腕の中に倒れこんだ。
「…いてぇ」
慶ちゃんの低い声。
「…う、重い」
私は何か?…にサンドイッチされている。
下敷きになっているのは…慶ちゃんらしいけど…。
「…恋羽ちゃん!元気?」
男の子の高めな声。
「…?」
「那智、恋羽が苦しそうだろ?ってか、俺も苦しい」
…はて?
那智って、那智君?
「あー…。久々の再開にこんなになるか?」