もう一度、君と…。

俺はすぐに聞くと、母さんはビックリしている。

「…え?なんでその名前っ?」

「母さんが言ってたよ」

俺は少し笑って言う。

すると母さんは苦笑いを返した。

「……もう話す時期かもね」

母さんは窓から覗いている空を見てつぶやいた。

「…揺早はね、……」

泣きそうになりながら、俺を見つめる。

あ、むやみに聞いていい内容じゃなかったんだ。

俺はグッと眉間シワを寄せる。

すると母さんはニコリと笑った。

「気にしないでよ。那智にはもう記憶にも残らない子だったんだから」

……記憶にも?

じゃあ、俺は知っている。

でも思い当たる節はどこにも無い。


「…あのね、揺早は那智の双子の妹だったんだよ」


「…………え?」

双子?

俺は信じられなかった。

なんで?

どこいったんだよ。

「…………お母さんのお腹野中で…死んじゃったの」

双子の妹・揺早は…死んだ?

双子ってことは…お腹野中で一緒だった?

あれ?

じゃあ、俺は…。

「…お母さん心臓弱くてね?産めるような体じゃなかった。でも…産みたかったの。自分が生きていた証にもなるし」

母さんは微笑んだ。

「…だから、双子って聴いた時は驚いちゃった!分娩室に運ばれて容態が急に悪くなっちゃって…」

母さんの目は涙ぐんでいた。

母さんは元から体が強い方じゃなかった。

「…だから、那智がお腹からでて来た時間…6時間だった」

涙を零す母さん。

…初めて母さんを泣かせてしまった。

俺は一際聞き分けの良い子供だった。

「…………ごめん。聴かなければっ…良かった」

俺は母さんの背中をさする。

「…ごめんね。揺早がでて来た時には…9時間が経ってた。…冷たかった。怖かったよぉ」

母さんが小さかった。

震えてた。

幼い女の子のように泣きじゃくる。

それから父さんが帰って来て…。

父さんからそれ以上の話を聴いた。

揺早は母さんの体の弱さを受け継いていた事。

俺が出てくる時、揺早の手が俺を押していた事。

本当は出て来た時に生きていたけど、すぐに息を引き取っていた事。

色々聞けた。



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