もう一度、君と…。

「…裕貴君だったよ。あれは…裕貴君じゃなきゃ…誰だろうね」

幸せそうに…裕貴の行ってしまった方向を眺めているのか、恋羽は笑った。

「…そうだな」

きっと…恋羽はまだ死んでしまった裕貴がいるかもしれない。そう思いたいのかもしれない。

自分を想ってくれていた裕貴を、どこかで消したくないんだ。

きっと…恋羽は、裕貴が好きなんだ。

誰と付き合っても…はずされることのない…ネックレスとブレスレット。

裕貴が贈った最初で最後のプレゼント。

彼氏がもしできたとして…ネックレスとブレスレットを贈られたとしても…。

恋羽はきっと外さない。

来世でまたみつけてもらえるようにする為に。

「…恋羽、帰ろう?…慶の所まで送ってく」

「…あ、」

恋羽が声を出す。

その先には…驚きを隠せない、慶の姿があった。

そこには…慶と、裕貴がいた。

恋羽は笑って走っていく。

そして…。


裕貴に抱きついた。

「裕貴君、お帰り」

笑顔で裕貴をみる恋羽。

慶を見ると…複雑そうに見ている。

でも…ハッとして、恋羽の腕に手を伸ばす。

「っ…恋羽!もう裕貴はいないんだ!ソイツは違う」

慶が泣きそうになりながら、恋羽の腕を掴む。

「…え?慶ちゃん、裕貴君だよ?」

恋羽は「今日の慶ちゃんは可笑しいね」と裕貴らしき人に笑いかける。

惑わされるな。

裕貴はいないんだ。

「…恋羽は僕だって分かったの?」

「…うん!裕貴君のことなら分かるよ?泣きぼくろがあ…ない」

恋羽は驚いてか、固まる。

やっと理解出来たんだと思う。

恋羽が言いたいのは、裕貴には左目の斜め下に、泣きぼくろがある。

でもその人には…ない。

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