もう一度、君と…。
俺が恋羽を見ると、一点だけを見つめてる。
その方向には…。
アイツがいた。
雪道多和。
雪道は傘もささずに、音楽を聴きながら、人の波を逆に歩いている。
「…多和だ」
恋羽が呟いた。
きっと久々だったんだ。
恋羽の瞳には今だけアイツが映る。
…いつも、か。
「傘…」
恋羽は走り出していた。
俺の手は、急いで恋羽の手首を掴もうとした。
でも…この前のように縛りつけたくはなかった。
「っ…」
宙を掴んだ手は虚しかった。
毎回思う。
俺は恋羽がこの手を離すことが一番怖かったんだ。
恋羽の後ろ姿。
だんだんと遠くなる。
このままもし帰ってこなかったら…。
「…恋羽次第だよな」
俺からは離れられない。
恋羽が好きだから。
ずっと優しくてあったかい恋羽だから、俺はずっと恋羽に恋してた。
雪道に傘を差し出した恋羽。
雪道は驚きでか、思わず傘のえの部分を持った。
恋羽は何かを言ってからコッチに走ってきた。