もう一度、君と…。
「……多和」
卒業式のあの日。
俺は礼子に呼び出されていた。
礼子とは昔からの腐れ縁で、切っても切れなかった。
それに…俺の元カノでもある。
俺は彼女である恋羽の声がして、その場に止まって捜す。
今日はやけに人が多い。
礼子は一点だけを見つめている。
「…多和、そのままでいいから聴いて欲しいの」
「…恋羽?」
なんでそんなコト言うんだよ。
俺は更にキョロキョロと捜す。
…すると、俺の背中に温かい温もりがあった。
「…私ね?…多和と居て…幸せだったよ。でも辛いの。多和が他の女の子にキスしてて…。だから多和と私は無理なの」
恋羽は更にギュッと抱きついてくる。
「…」
俺は、放心状態。
この流れ的に……想像してしまうシチュエーション。
…なんでもっと早く気付いてやれなかったんだろう。
どうして俺は…。
「…多和、好きだったよ。ありがとう…、別れよう」
「えっ?」
なんで…?
どうして…?
俺は驚きを隠せなくて、振り向いた。
…俺の振り向いた先には、恋羽の泣き顔があった。
辛そうに…。
苦しそうに…。
恋羽の泣き顔を見るのは2度目。
「…ど、して」
思ったように声がでず、かすれる。
恋羽の目をジッと見つめた。
まだ…修正できるかもしれない。
期待をちょっと寄せる。
周りの人は俺らには見向きもしない。
「…そのままだよ。別れよう?」
恋羽はニッコリと微笑んだ。
…なんで泣きそうな顔してるの?
「…ねぇ、多和。また君に逢えたなら…。友達だったらいいね」
俺が今まで生きた世界の中で…一番綺麗だと思った。
こんなに綺麗な笑顔は見たことない。
俺が翻弄されてる間に、恋羽は人混みの中に紛れ込んでしまった。