もう一度、君と…。



目を開けると、空からは『雪』が降っていた。

「…俺はいつになったら…あの子を忘れられるかな」

自嘲気味に笑う。

ベンチから立ち上がり、部活を思い出す。

「…先輩、明後日練習試合があるって言ってたっけな?」

俺は中学からサッカーをしている。

サッカーで屈指の…繋田高校に通っている。

A特だったんだけど、A特の更に上…2A特待を貰った。

寮も免除。

あの子は何処の高校に行ったんだろう?

俺は都会とは言い難い場所にある公園を後にした。

都会だけど…ココには自然がある。

暇な時は必ずと言っていいほど、ココに来てしまう。


街に出ると、行き交う人々は皆早足。

そりゃ、当たり前か。

東京にきて、もうすぐで1年なのに…全く都会に慣れやしない。

マフラーをグルグル巻にして、ウォークマンで曲を聴き…、ポッケに手を突っ込んだ。

ランダムに曲を流していると…、女の子が好きそうな歌詞が耳に流れ込んでくる。

どうするコトもできずに苦い顔をしていると…、いっきに雪が強くなる。

…なんだよ、冬雪のLOVEソングかよ…。

皆、傘を差して歩いている中、俺はただ一人、歩き続けていた。

「…さむ」

一言呟いた瞬間、……雪がやんだ。

俺が空を見上げると、…女の子らしい可愛いガラが目に入ってくる。

傘?

「…あの、傘…あげます」

俺に傘のえの部分を持たせて、男の元へ行ってしまう女の子。

…確かあの制服、高美桜笑高校だよな?

…頭良いんだな。

顔が見れず、とても残念。

しかも、彼氏持ち。

…モノクロのマフラーに、ピンクの耳当て、真っ赤なニット帽。

髪はセミロングで、毛先がクルリと内側に向いている。

焦げ茶色の髪の毛は…とても綺麗だった。

彼氏と二人で人混みの中に消えていく…。


「…俺、ありがとうって言ってないんだけど…」

また…会えるかな?

俺はありがたくその可愛らしい傘を貸してもらうコトにした。

寮は8時前に帰らないと締め出しを食らう。

まだ6時だと言うのに、早くも暗い。

曲はあっという間に変わっていく。

< 234 / 291 >

この作品をシェア

pagetop