もう一度、君と…。
寮に入ると…晟弥が居た。
晟弥はココ…繋田高校に入って2B特待である。
2が付いてれば、寮は免除に近い。
「…多和か」
少し驚いた様な視線が向く。
俺は気にせず、傘を閉じて…雪を手で払い落とす。
「…っ、多和…それっ」
目を見開いて、傘を指差す。
晟弥とは昔から仲が良かった。
「嗚呼、街歩いてたら…『あげます』って言われて…」
「違う違う!傘のえの部分見ろ!」
俺はすぐに傘のえの部分を見ると…そこには意外な人の名前が…。
俺は驚きと嬉しさで…。
【恋羽】
「…恋羽?」
「…あったの?」
晟弥は不思議そうに俺を見た。
「いや…。アレって…」
恋羽だったのか?
俺は晟弥を置いて、自分の部屋に戻ろうと足を向ける。
ドンッと人とぶつかってしまう。
「あ、すんません」
「あ、こちらこそごめんね?」
俺よりも少し小さい…女の子らしい雰囲気の男子がウルウルと見てくる。
「…雪道多和」
「え?」
なんで俺の名前?
「おい、那智!はよこいよ!」
「…あ、なんでも無いよ。僕は呼ばれたからまたね」
ニッコリと笑顔を浮かべて去って行く。
俺は少し首を傾げて、考えるも…思い出せない。
でも…どこかで…。
俺は部屋に戻って、傘を見つめる。
「やっぱり…恋羽だったのか?」
…確かにあのマフラーは恋羽だったかもしれない。
でも……彼氏がいた。
アレって…彼氏だよな?
2人で仲良さそうに、人混みに消えて行く姿。
俺はサーッと血の気が引いて…今にも崩れ落ちそうになった。