もう一度、君と…。
シュートをしながら、笑った恋羽。
小学生の頃からそうだった。
シュートの時だけは、毎回笑っていた。
きっと恋羽は気付いていないんだろうけど…。
「…真夏恋羽さんよね?」
「っ…え?」
急に礼子が呟く様にして言った。
「多和が大好きな子。凄いよね?私じゃ足元にも及ばない」
寂しそうに俺を見て笑った礼子。
「…」
俺は何も言えなかった。
「…このチケットね?恋羽さんに頼んで貰ったの」
試合に目配せしながら笑う礼子。
恋羽のシュートはもう4本も決まっている。
「羽翼って、小学生のチームだよね」
「知ってたんだ?」
俺の問いにコクリと頷くと、静かに続けた。
「…私、謝りに行ったの。そしたら『気にしないで?私は裕貴君の為にやってたから』って言ったの。…多和、いいの?」
「…何を?」
俺は力なくおどけて見せた。
裕貴に取られる。
…嫌だよ。
嫌だけど…恋羽を一番に幸せにしてくれると言ったら………裕貴しか居ないんだと思う。
「…恋羽さん、裕貴って人のとこに行っちゃうよ?」
礼子は試す様な口振りで言ってのけた。
「恋羽、あぶなっ」
俺はその声で試合を見ると、恋羽の顔面目掛けてボールがとんでいる。
「っ!?」
ーーパンッ!
「「…っ!?」」
観客はもちろんの事、相手も驚いている。
だって…ポストが…!
右手一本で…プロのシュートを止めたからだ。
そして…ポストの奴が恋羽の前に立ちはだかる。
すると…羽翼のメンバーも前にでた。
「…すみません。さっきから相手チームのシュートが恋羽の顔面目掛けて飛ばして来ているんですけど…気のせいですかね?」
真っ黒な笑みを、審判に向けるポスト。
「…女の子の顔に傷をつけるなんて……アンタ等最低だね」
宇多田那智も真っ黒な笑みをむける。
「…運動は出来ても…常識がなってないのはどうかとおもいますがね?」
頭の良さそうな奴が涼し気に笑う。
「…常識がないのはどうかとおもうけどな」
「「…プロの選手の皆さん」」
「「…っ!?」」
プロの選手たちはかなり焦っている。
ニヤリと笑うポストの男。
審判は次はそんなことがないように…、と促している。
恋羽はそのポストの男に近づくと、タイムを取る。
絶対痛いよなぁ…。