もう一度、君と…。
「…そこはお前たちの見せ所だろ?今年は俺は出ないんだ。コレで恋羽は決めるだろうよ」
灯真は天井を仰ぐ。
「…それに今年の優勝商品は、ミスとミスターはお互いの願いを聴き合い、叶い合う…それだ」
「灯真、もしかして俺らの為に?」
那智が真剣な顔で聴くと、灯真はニヒニヒと笑う。
「最初は拒否られたよ。でも何とか説得したんだ。今年はどうしてもなんだって言ってさ」
灯真…絶対に一度は心が折れただろうな…。
那智が言ってた気がする。
『灯真は拒否されたり、否定されると相手が怖くて堪らなくなるんだよね』
それはお母さんのせい…とか言ってたよな?
「…克服したんだよ。恋羽が…俺を助けてくれた。だから俺は恋羽の好きなようにさせてやりたい」
いつになく真剣な目。
助けたって…。
「…俺も助けてもらった。俺の双子の妹…揺早は生まれてすぐに死んだんだ。恋羽は俺の両親の為に1ヶ月も演技してくれたんだ」
恋羽は…羽翼皆を支えてる。
…那智の場合は、生まれてすぐに死んでしまった揺早に恋羽はなりきった。
灯真の場合は、きっと灯真のお母さんを説得したんだろう。
…だから、灯真はそれを恩返ししたいんだ。
「那智君っ♬来たよぉ」
一般客が俺らのクラスに入ってきた。
それも尋常じゃない数…。
那智はスッもニコニコ愛想のいい笑顔で客を湧かせに行った。
「…多和、俺からしたら、恋羽はお前が好きだよ。でも、恋羽の立場からしたら…」
「雪道君!呼ばれてる」
クラスの女の子が俺を呼びに来た。
「…あ、もう少しま「行けよ、多和」
俺の言葉を遮った灯真。
「…自分で知るべきことだ」
ニッと笑った灯真。
俺は灯真に少し笑ってから、客に呼ばれた為、フロアに戻った。
「…ごめんな。恋羽は…付き合ってんだよ。しかも…慶、ミスターコンテストに出るやつと…」
灯真は多和の後ろ姿を見て、苦しそうに呟いた。