もう一度、君と…。

「お待たせ致しました。雪田 蛍多(ゆきだ けいた)です」

…芸名らしきもの。

雪道多和の、『雪』と『多』をとって。

『雪』田 蛍『多』。

「うわぁー♡雪田君ってゆうの?」

ケバケバしい女が三人。

ホントは雪道多和だけどな!笑

「えぇ。雪田蛍多です。何かあったらお呼び下さいね」

ニコッと笑って、逃げようとすると…、ギュッと握られた腕。

…しつこい。

「……どうかされました?」

そんなことしか言えない。

「…い、いえっ」

あれ?

もう一人居たんだ。

ケバケバしい女三人のなかに、一人だけ純粋そうな女がいた。

…恋羽の方が綺麗。

「…そーですか。なんかあったら言ってね」

俺はニコリと笑うと、違う席から俺の指名が聞こえた。

引っ切り無しに「雪田蛍多」が呼ばれる。



「何にそんなに悩んでるんだよ」

「…だって!那智と灯真君指名したいの」


俺は驚いた。

そこには……更に美人になった恋羽がいた。

その横には…間宮慶介。

「…コレでいいんじゃね?ホラ、一番人気だし」

間宮慶介は、面倒臭そうに俺の名前を答える。

「…でも、那智君と灯真君と写真撮りたいっ」

間宮慶介の腕をつかむ恋羽。

…なんで?

やっぱり付き合ってるの?

ねぇ、やっぱり俺じゃ恋羽を幸せにはできない?

…嗚呼、心臓が痛いや。

泣きそうになった気持ちを、グッと堪えて客を相手する。

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