もう一度、君と…。
…でも、傘のお礼が言いたい。
言えなくてもいい。
だから、少しでも恩返しをしよう。
「いらっしゃいませ。…那智と灯真でいいんだよね?」
俺は恋羽を覗き込む。
すると、驚きの表情。
「……多和」
恋羽、今でも名前で呼んでくれるの?
「…うん。久し振り…傘、ありがとね。助かった」
やっぱり話したい。
隣にいる間宮慶介は、寂しそうに俺を見ていて…。
「…間宮慶介さんだよね?…恋羽のことよろしくお願いします。…俺のせいで恋羽に不安な思いにさせたから」
…自分で言って、泣きたくなるなんてふざけてる。
「…多和。そんなことないよ。私…幸せだったんだよ?」
涙目で訴えてくる恋羽。
それは恋羽の優しさであって、それは本心じゃない。
「…いいんだ。恋羽が幸せでいてくれるのなら…俺は幸せだよ」
コレで君が幸せになれるのであれば…俺はペテン師にでもなる。
「…雪道多和さん。君と話がしたい」
「…はい。取り敢えず恋羽の為に、那智と灯真を呼んで来ます」
俺は一度下がって、那智と灯真を恋羽の所に送る。
「…間宮さん。行こう」
俺と間宮がクラスを出ようとする時、恋羽が叫んだ。
「…慶ちゃんっ!私もっ」
「…恋羽」
そこを那智と灯真が抑え込む。
「…大丈夫だから。恋羽が思ってるようなことにはならないから」
恋羽は床に倒れこむような形になった。
「…恋羽」