もう一度、君と…。

…泣きそうな恋羽を見て、昔を思い出す。

「…飴あげるから。お願いだから、…泣かないで」

俺は我慢出来ずに、恋羽の近くにしゃがみ込み…飴をさしだす。

恋羽の泣き顔を見ると…何故か泣きたくなる。

恐る恐る俺の手の中にある飴を手に取った。

「…多和、ありがとね。…もう泣かないよ」

ニッコリと俺に微笑む恋羽。

……恋羽が俺に微笑んでくれたのは、もう2年近く前になる。

「…泣いてもいいけど、彼氏の前だけにしなよ」

間宮の前だけにしないと、周りは皆恋羽を手に入れたがる。

「………そうだね」

「恋羽、写真撮影しようか!」

灯真がテンションを上げて行く。

「…うん。那智と灯真君と撮る」

恋羽が立ち上がって、向こうにかけて行く…。

「…嗚呼やって、成長するんだね」

間宮が呟いた。

「…そうだね」

俺も呟く。


俺と間宮は移動をする。

「「…」」

お互い無言。

行く先は…屋上。

いつもは皆の憩いの場だけど、文化祭ではさすがにいつもの連中も来ない。

「…もうすぐだから」

俺は無言の間宮に話しかけた。

「…おう」

裕貴のことも、恋羽のことも…沢山話せたらいいな。

屋上のドアを開けると、やっぱり人は居なかった。

「…繋田高校の屋上は綺麗だな」

背伸びをする間宮。

「…俺のお気に入りなんだ。夕日は綺麗だし」

…それに、恋羽を思い出せるから。

その言葉は胸にしまい込む。

「…俺は間宮慶介。慶介でも慶でもいいから」

ニッコリと笑う。

「…じゃあ、慶介でいい?」

「おう。俺は…」

首を傾げる慶介。

「…雪道多和。だから、多和って呼んでくれて構わないよ」

俺が微笑むと、向こうは少し驚いた表情。

「…多和って笑うと笑窪できるんだな」

「…え?」

えくぼ?

「…【笑窪は恋の落とし穴】…だっけか?」

ニシニシといやらしく無邪気に笑う慶介。

「…聴いたことはあるわ」

俺も何故か笑ってしまった。


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