もう一度、君と…。

「…恋羽のこと、好きだよな」

言わなくても分かってる、そんな顔。

「…ごめんな。忘れられないんだ。泣き顔も…微笑んだ顔も…声も全部」

俺は素直に話した。

傷付けたこと。

キスしてないこと。

沢山辛い思いをさせたこと。

全てを話した。

慶介は時々深刻そうな顔をするものの、全てを聴いてくれた。

「…慶介に頼みがある」

俺は真剣に慶介を見つめる。

「…何?」

慶介は少し考えて返事をする。

「…どうか、恋羽を幸せにしてやってほしい」

俺は頭を下げる。

土下座すると、慶介は目を見開いた。

「た、立てよ!」

「…恋羽は幸せにならなきゃいけないんだ!ずっと後悔させたりなんて俺には出来ない」

俺の存在が、恋羽を苦しめているのなら…俺は離れなきゃいけない。

それくらいの覚悟でいるつもり。

きっと俺は独り身だ。

恋羽以外に恋をすることなんて出来っこない。

「…多和、俺にも出来ないんだ」

自信なさげに笑う慶介。

「…何かあったのか?」

俺は顔を上げて、慶介を見つめる。

すると、慶介は座って…話してくれた。

裕貴のこと。

裕貴のお兄さん・貴誇さんがいて、家に招き入れようとしてること。

そして…羽翼のこと。

全部話してくれた。

「…きっと、恋羽はまだ裕貴を過去に出来ないんだ。お墓に行っては裕貴に話しかけて…泣いて笑って」

周りから見たら変な子なんだろう。

でも…そうなんだ。

「…綺麗なんだよ。恋してるなって…恋すると女って綺麗になるんだろ?」

「…きっとな」

恋羽はまだ裕貴に恋してるんだ。

過去にすることも、今にすることも出来ない。

恋羽の中ではそういう存在なんだ。

< 272 / 291 >

この作品をシェア

pagetop