もう一度、君と…。
「…恋羽のこと、好きだよな」
言わなくても分かってる、そんな顔。
「…ごめんな。忘れられないんだ。泣き顔も…微笑んだ顔も…声も全部」
俺は素直に話した。
傷付けたこと。
キスしてないこと。
沢山辛い思いをさせたこと。
全てを話した。
慶介は時々深刻そうな顔をするものの、全てを聴いてくれた。
「…慶介に頼みがある」
俺は真剣に慶介を見つめる。
「…何?」
慶介は少し考えて返事をする。
「…どうか、恋羽を幸せにしてやってほしい」
俺は頭を下げる。
土下座すると、慶介は目を見開いた。
「た、立てよ!」
「…恋羽は幸せにならなきゃいけないんだ!ずっと後悔させたりなんて俺には出来ない」
俺の存在が、恋羽を苦しめているのなら…俺は離れなきゃいけない。
それくらいの覚悟でいるつもり。
きっと俺は独り身だ。
恋羽以外に恋をすることなんて出来っこない。
「…多和、俺にも出来ないんだ」
自信なさげに笑う慶介。
「…何かあったのか?」
俺は顔を上げて、慶介を見つめる。
すると、慶介は座って…話してくれた。
裕貴のこと。
裕貴のお兄さん・貴誇さんがいて、家に招き入れようとしてること。
そして…羽翼のこと。
全部話してくれた。
「…きっと、恋羽はまだ裕貴を過去に出来ないんだ。お墓に行っては裕貴に話しかけて…泣いて笑って」
周りから見たら変な子なんだろう。
でも…そうなんだ。
「…綺麗なんだよ。恋してるなって…恋すると女って綺麗になるんだろ?」
「…きっとな」
恋羽はまだ裕貴に恋してるんだ。
過去にすることも、今にすることも出来ない。
恋羽の中ではそういう存在なんだ。