もう一度、君と…。

真っ赤な花を…もう一度。


俺と慶介は、何食わぬ顔をして戻る。

クラスに着くと、更に賑わいをみせている。

「…恋羽、ただいま」

慶介はゆっくりと歩いて恋羽の元に向かう。

恋羽は一人でジュースを飲んで、足をブラブラさせていた。

周りの男どもも
「話しかけよう」
とか
「無理だよ、ほら」
とかを繰り返している。

…ありゃ無理だわ。笑

灯真と那智がジトリ…と男たちを睨んでいた。

「っ!慶ちゃん、おかえり」

立ち上がって、慶介に抱きつく恋羽。

…苦しい。

【今からミスターとミスコンテストを薔薇の裏庭で行います。参加する生徒や一般の方もいらして下さい】

「…行かなきゃ」

「…多和っ!慶…あと恋羽も行くよ!」

那智が俺に近寄ってきて、他の2人にも声をかける。

「「なんのこと?」」

え?

な、なんのこと?

それってっ!

灯真を見ると、やっちった!笑…的な顔で見てくる。

灯真…絶対にわざとだ。

話せよ、馬鹿。

俺と那智は慶介たちを連れて、体育館に急ぐ。

体育館につくと、椅子に座っていたのは、晟弥と礼子だった。

「あー、きたきた!おっそいじゃん」

晟弥はニヤリと笑う。

「え、あー…ごめん」

「まぁ、早く着替えねーと始まるぜ?」

晟弥は俺と那智、そして慶介を連れて行く。

恋羽があたふたしている所を、礼子が案内。

「…はい。好きなの着替えて」

案内された先には、沢山の衣装。

俺は面倒くさくなって、近くにあった黒のタキシードを取る。

「コレでいい?」

「どれでもいーよ。はい、着替えて」

晟弥は俺を更衣室に突っ込む。

「お、おいっ」

閉められたドア。

なんか晟弥…嬉しそうだったなぁ?

…きっと礼子と上手くいったんだよな。

黒のタキシードに着替え終わり、ドアを開けて、薔薇の裏庭に向かう。

出ると皆待っていた。

「…ん?恋羽はどーしたの?」

俺は不思議に思ったことを口にする。

「嗚呼、礼子さんが出てきて、『アンタらは先には行きなさい』って言われたんだ」

「なるほどね、分かった」

俺たちは3時ちょっと前に、薔薇の裏庭に着くことが出来た。

…薔薇の裏庭って凄い。

だって…真っ赤な薔薇ではなく……ピンクの薔薇だから。

緑の中に綺麗な濃いピンクが浮かぶ。

奥には、白で統一されたイスとテーブル。

そして…綺麗に飾られた、舞台。

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