もう一度、君と…。
あの日の約束。
夢だよね…。
恋羽が目の前にいるなんて…そんなの嘘だ。
夢なら…好きだよって伝えてもおかしくない。
伝えたって…嫌いだよ、なんて言わない。
「…恋羽、もっと近くに来て」
ねぇ…好きだから。
なんで座っているんだろう…そんな考えればわかることさえ…考えようとはしなかった。
俺は恋羽の肩を引き寄せる。
あったかくて…笑顔になった。
ホントに…幸せだった。
「…ごめんね。好きだよ」
「えっ…」
ギュッと抱きしめた。
すると…スッと手が回った。
え?
夢でもなかった。
回った手に嬉しさが込み上げる。
「…多和」
「…っ!?」
俺はやっと分かった。
コレが現実だって。
慶介の声で…やっと。
恋羽からサッと離れた。
そして…舞台には俺と恋羽。
慶介は舞台下に居て…。
「…ごめん、慶介」
泣きたくなった。
なんで夢だって決めつけたんだろ。
なんで疑わなかったんだろ…。
抱きしめたんだよ!
俺はその場にうずくまる。
もう嫌だ。
【雪道多和さんがミスターコンテスト優勝です!】
…俺が優勝?
【真夏恋羽さんがミスコンテスト優勝です!】
司会が俺に気遣ってか、もう一度言う。
【それなので、願い事をお互いに叶い合う、それが報酬になります。】
周りは歓喜していて…。
座り込んでいる俺に、恋羽の手が差し出された。
「…ホントに久し振りだね、多和」
……あったかかった。
恋羽だって思ったら、涙が自然と溢れた。
皆男のくせにって思うかもしれない。
それでも構わない。
周りなんてどうでもいい。
でも、…恋羽には彼氏である慶介がいる。
それは忘れちゃいけない。
「…久し振りだね、恋羽」
俺は思い出した。
『ねぇ、多和。また君に逢えたら…、友達だったらいいね。』
恋羽。
まだ君はそれを望んでいますか?