もう一度、君と…。
望んでいるに決まってる。
彼氏のいる恋羽に、今更俺がどうのこうのなんて言う筋合いはない。
「…多和。私、二人で話したい」
どこか泣きそうな顔。
【それが…恋羽さんの願いですか?】
司会がそれを問いかける。
でも恋羽の耳には届いてはいない。
「…あの日の約束、憶えてる?」
恋羽は俺に近寄った。
あの日って言うのは…卒業のだよな。
俺は頷いた。
恋羽はそれを確認して、慶介を見て…小さな声で。
「ごめんね」
そう呟いた。
慶介は、微笑んだ。
「…好きだったよ、恋羽」
俺が壊してしまったんだ。
「私の願いは…、あの日の約束をなかったことにします」
恋羽の泣きそうな顔。
…あの日の約束をなかったことに?
ねぇ、多和。また君に逢えたら…、友達だったらいいね。
それをなかったことにするって…。
「…ごめんね、私やっぱり約束破りそう」
泣き笑いをする恋羽。
涙が頬を伝って舞台の床に落ちる。
「…ごめんね、やっぱり私はアナタが好きだよ」
恋羽が抱きついた。
俺も思わず抱きしめる。
ハッとした。
「…慶介とは付き合ってるんだろ?」
俺はスッと恋羽の手を外す。
「…別れたよ。…振られたの」
ふ、振られた?
「…俺には恋羽を笑顔にできないって言われたの」
「い、いつ?」
「一週間前に…」
一週間前って…。
じゃあ今日の仲良さげな感じはなに?
信じ固くて…俺は恋羽を見て唖然。
「…多和が今でも好きだよ」
恋羽ってこんなキャラだったっけ?
…アレは見栄っ張りだったのかもしれない。
それを今更気づく俺は最低だ。