もう一度、君と…。



「…お、スタメンの高2と、1Q出てる高2」

スタメン?

流石に焦ってきたんだろうなぁ…。

きっとあの小川コーチは私と啓を舐めているんだろう。

「…啓はハーフコート。私はオール」

「分かった。俺がアシストな」

私はスタメンにつき、啓は1Qのもう一人。

「ディフェンスはアシストなし」

「ん…」

見くびって…でたのがこの人たちだ。

いっきに難易度は上がるはず…。

ボール出しからカットにでて、シュートをするか…。

それとも……。

手の上で弄ぶか…。

私は下を向いて、口元が上がる。

ボール出しは下がって見逃す。

カットせずに…ハーフコートまで下がった。

「…先輩?」

「…いいよ。アシストは」

「…」

啓は私を呆れた様に笑った。

きっと、派手にやるんだなぁ?

なんて思っていると思う。

「…弾くから、それ取って速攻」

「…ん」

笑顔になった啓。

慎重にボールを運んでくるスタメン。

……そして、このコートで…この人たちは踊らされていることに。

いつ気づくだろう?

手のひらの上で……。

どんなことをしてくれるだろうか。

フェイントシュートにわざと引っかかる。

飛んだ所をサッと抜こうとするスタメン。

止まってジャンプシュート。

だから…コレはあたしの予想の領域です。

私は足に力を込めて跳んだ。

向こうの方が高いけど…私にはこのジャンプがある。

私はスタメンの手の中にあるボールを叩き落とす。

ーーパンッ

良い音と共に…勢い良く。

それを啓はワンバウンドも無しに取って一体一。

啓の一体一は凄く面白い。

私の考えを超えてくる。

越えられる…。

こんな技あるんだ…そう考えさせられるんだ。

スリーポイントシュート辺りに入った啓は…、相手の股にボールを通した。

ワンバウンドしたボールはまた啓の手の中に…。

そして…レイアップシュート。

ーーシュパッ

なんて…良い音なんだろう。
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