Candy of Magic !! 【完】
帰省、そして衝撃
赤ん坊のときにカノンは能力のひとつである瞬間移動で、自らの意志で頭の元へと降り立った。そのときケヴィはすでにいて、ケヴィはカノンの兄代わりだった。
すると、必然的にカノンはカイルと出会うことになる。カノンは地球へと送られたときに記憶を消されたけど、最終的には思い出すことができた。
つまり、彼らは見えない糸で結ばれていたのである。
まあ、わかっちゃった人はいると思うけど、三角関係に陥ったわけで……
「おい、いるか?昼飯だぞ」
ノックもなしにヤト君がいきなり部屋の中に入ってきたもんだから驚いて読んでいた本を閉じてしまった。そのせいでどこまで読んだのかわからなくなっちゃったじゃんか。
私はヤト君を睨み付けた。
「ノックぐらいしてよね」
「したぞ。おまえの耳が遠いだけだ」
「遠くありません!集中してただけ」
「かれこれ一時間ぐらいそれに没頭してたみたいだしな」
「ええ!そんなに読んでたっけ」
「取り敢えず、下に降りるぞ」
ヤト君は呆れた笑みを浮かべて私の手首を引っ張った。知らないうちに冷えてしまった手首にはその手が暖かくて心地いい。
「お父さん強かったでしょ」
「そりゃな。先生やってるわけだし。とても片腕だけとは思えない」
「それに、案外刀って重いしね」
「ああ。最初は筋肉痛が酷かった。あとは剣ダコもできたし」
「剣ダコ!ペンダコしかできたことないや」
「逆にそれ以外であったら引く」
「あはは……それもそうだね」
まさに掴んでいるヤト君の手のひらには硬い箇所がいくつかある。恐らく全部剣ダコだろう。
今まで意識してなかったけど、ヤト君は意外としっかりした体型をしている。肩幅は広いし、手のひらも大きいし、足は長いし、線は細いし……
男子のくせして生意気な。
「何むすっとしてんだよ」
「別にー。もっと性格良かったらもっとモテるだろうなって思っただけ」
「なんでそれで拗ねてんだ?」
「スタイルいいから」
私の答えを聞いてヤト君は声を上げて笑った。それにさらにむっとする。
でも、ヤト君は純粋に笑っているようだった。
「男女を同じ目で見るのはおかしいだろ」
「なんか、言い方がヤダ」
「……ったく。肉付きが違うんだっつーことだ。女子がひょろっとしてたら気を使うだろ」
「逆に男子が二の腕が……とか言ってたらぎょっとするね」
「おまえのその例えウケる」
私たちは一緒になって笑った。でも、ヤト君の笑いの震動が手首に伝わってきてハッとした。
「ねえ離してよ。いつまで掴んでんのさ」
「下に着くまで」
「なんで?」
「なんでも」
ヤト君は結局教えてくれないまま、リビングに着くまでずっと私の手首を引っ張っていた。
離されたとき、昨夜と同じで触れていたところが急に寂しくなった。人肌とはなんてちょうどいい暖かさなのだろう。
いや、温かさ、の間違いかもしれない。