Candy of Magic !! 【完】
生徒会
「……先生、ここじゃキツいっす」
「そうだね……案外狭かったか」
ソラ先輩が先生に苦笑した。先生も苦笑い。
先輩たちが先生の言葉通り自分たちのマナを出現させると……教室が動物たちで溢れかえってしまったのだ。
アラン先輩はオオカミ……っぽい青い犬。忠犬のごとくその隣で凛とした表情で座っている。
ソラ先輩は赤いオスのライオン。たてがみがふさふさとしていて気持ちよさそうだけど……身体が大きいから窮屈そうだ。
チサト先輩は青いペンギン。ソラ先輩のライオンのたてがみを嘴でつついて遊んでいる。
ルル先輩は性格に似合わず緑色の大きなサイ。開けられていた窓からお尻がはみ出してしまっているが、角が教室に入っているからそれで狭く感じるのかもしれない。
リト先輩は緑色の馬だった。私が座っている席の真後ろに立って私を見下ろしている。そしてあろうことか私の髪を歯で甘噛みし始めたではないか。
「え、ちょ、なんで?」
「ああ、ごめん。そいつ気に入ったやつの髪を弄るのが好きなんだ」
「そ、そうなんですか」
気に入ってもらえたのなら嬉しいけど、いくら悪気がないとはいえ髪が乱れるのはいただけない。
その鼻面を手で退けようとするも見事にサッとかわされてまた噛まれてしまった。わしゃわしゃと弄られてボサボサになっていく。
……まさにありがた迷惑だ。
「うん。やっぱり素質がある人がわかるんだな」
「俺たちは完全に無視なのによ」
「知りませんよそんなこと。ソラ先輩は特に」
「……だからなぁ、そんなこと真顔で言うなって」
「事実じゃないっすか」
「だから真顔で言うなって……」
だんだんとしょげていくソラ先輩が目に見えるようだけど今はそれどころではないのだっ。
止めてよ弄るの!いつまでやるんだおまえは!
私がむきになって腕を振り回していると、いきなり馬が上空に浮かんで走り出してしまった。
へ?と私がぽかーんと見送っていると、目の前を赤い小さなものが飛んでいくのが見えた。あれは……ヤト君のネコ?
「ああ、悪い。そいつ猫じゃらしとか好きなんだ」
今まで必要最低限の言葉しか言っていなかったヤト君が喋った。でも、猫じゃらしって?
「……なるほど。僕の馬の尻尾が猫じゃらしに見えるのか」
……なるほど。あのふさふさ感といい揺れる感じといい。
猫じゃらしに見えなくもないかな。マナは本来の動物の本能を兼ね備えているからこんなことになってしまったのだろう。
「へえ、マナがすでにいるのか君は」
「まあ……はい」
「ますます生徒会に入ってもらいたいと思っている」
「……」
「考えておくといい」
「お、会長直々に勧誘?大胆~」
「黙れソラ」
「言葉が簡潔過ぎてキツい……」
「では、場所を移そうか」
「そうですね」
クールなアラン先輩に一突きで撃沈されたソラ先輩をよそ目に、先生とチサト先輩が話を進めた。
場所を移すってことは、もっと広いところに行くのかな。そこで力を発揮させるってこと?
でも私、力使えませんが……
そんな私の表情に気づいたのか、先生が衝撃発言をした。
「ああ……ミクは力が使えないことはすでに知っている」
「え……」
「なぜかと聞かれても答えられないが、取り敢えずそのことは皆知っているから」
「ヤト君も……?」
「……」
隣にいるヤト君に視線を送るも顔をしかめられて視線をそらされてしまった。ということは、知っていたということだろう。
なんかショック。知っていたならそう言ってほしかったな。
私たちは気まずい空気のまま教室を出て、先生たちの後をついて行った。