Candy of Magic !! 【完】
数分後、先輩が作ったイルカの隣には……
見事な魚が泳いでいた。
長くて優美なひれをひらひらと漂わせ、水の中を踊る……
ように見える作品。このスバル君のガラス細工からは躍動感を感じられた。きちんと土台まで作るという懲りよう。
先輩のサポートもほとんどなくこの出来上がりは予想外だったのか、先輩は僅かに驚いているようだった。
「おまえは……経験者か何かなのか?」
「いえ、特にはありませんが……学校に入る前はボトルシップを趣味で何個か作りました」
「ボトルシップか……それなら手先が器用なのは頷けるか」
「ありがとうございます」
ボトルシップ……あれってどうやって作るんだろ。瓶の中に船を作っちゃえるなんて神業としか思えない。
土台も作ったのは、ボトルシップからの完璧主義が項を制したのだろう。記憶力といい細かさといい、彼は真面目君のようだ。
「先輩ー?どうですかねぇその男子は」
女子の先輩がこちらに顔を向けて問いかけてきた。アラン先輩は満足そうに頷いてからその先輩に答える。
「合格だ。もし良ければ、ぜひ入ってもらいたい 」
その言葉に安堵するスバル君。そして、立ち上がって頭を下げた。
「よろしくお願いします!」
「こちらこそ」
こうしてスバル君は部員となった。その後も仮入部期間に訪れて来た新入生はちょいちょいいたけど、けっきょく誰もお許しをもらえなくてこの愛好会の新入部員はスバル君ただひとり。
私はマネージャーだから、実質は部員じゃないけど今後は入り浸ることになるから、スバル君だけが先輩たちの後輩ということにはならなさそう。私も温かく先輩たちに歓迎された。
スバル君が入部届けを出した日、先輩たちは私たちの歓迎会を催してくれた。