Candy of Magic !! 【完】
自己紹介
教室に戻ると、なんとなく不思議な空気が流れた。皆とははじめましてで何を話せばいいかわからないし、でも20人しかこの教室にいないしで。
まあ、取り敢えず席につこうとそれぞれが黒板の周りに集まる。そこには座席表が白いチョークで書かれていた。
私は一番後ろの席だった。順番は無難に名前の順。5人ずつの4列。どうやら前はあの耳を塞いだ女の子で、右隣は男の子で左は女子のようだ。
よかった、女の子が近くにいて。同性がいるとほっとするものだ。
ぞろぞろと座席表通りに座る。案の定、ある程度時間が経つとぼちぼちと会話をする声が聞こえてきた。つられて周りも話し始める。
その喧騒を眺めていると、前にいる女の子がくるりと振り返って私に話しかけてきた。
「はじめまして!あたしはユラだよ!ユラ・カルクス」
にっこりと笑顔を見せて名前を名乗った。ユラ・カルクス。明るい性格を象徴しているかのように、その口調ははきはきとしていた。
彼女は炎の魔法の持ち主。
「こちらこそ。私はミク。ミク・カーチス」
「カーチス!伸ばしの方が後なんだね」
「そう……だね。カルクスとカーチスだもんね」
「なんだか似てるね!これからよろしくね。ええっと……」
「ミクでいいよ」
「ミクちゃん!あたしはユラでいいよ」
「うん。ユラ、ね」
色素の薄い茶色の瞳を細めてユラは笑った。彼女の茶髪によく合った色だな。
私は黒目黒髪。平凡な色だ。それだけに暗い印象を与えてしまうのがたまに傷。彼女とは正反対。
「ねえ、クラス分けってどうやって決めたのかな?」
「さあ。わかんない」
「成績順だったりして……」
「それはどうかな。隣にいる男子……確か成績優秀者だよ。新入生代表で壇上に上がってた」
私の右隣で伏せって寝ている彼。彼は入学式のときに代表として壇上に上がっていた。
そのとき、しっかりと見た。
あのネコが興味を示したように一度、顔を上げてしっかりと彼を見ていたのを。もちろん彼はそれが見えてない。特に気にすることでもないんだろうけど、まさかそこにネコがいるとは思ってないだろうなって、印象的だった。
その彼が隣にいて正直ビックリした。
「え、そうなの?あたし乱視でさぁ、二重にも三重にも輪郭が見えるんだよね」
「ははは、それじゃあ見えなかったかもね」
ひそひそと小声で囁き合う。それを知ってか知らずか、彼は頭をボリボリと手で掻いた。どうやら爆睡ではないらしい。
でも、彼の話題はそれきりだった。
あとは誕生日がいつだとか、家族はどうだとか、学生寮はどこの部屋だとか。
無理やり話題を作って話しているわけでもないし、私も聞き手に回ってて退屈しないからこの子とならこれから上手くやっていけそうだ。ユラも終始にこにことしている。
……私の情報?いいよ。教えられるだけ教えてあげる。