Candy of Magic !! 【完】

球技大会二日目




「ヤト!もう平気なのか?ヤバかったじゃんか」

「平気。ほら」

「……あの色はどこ行った?!」



次の日、ヤト君が教室に登場するや否やどよめきが沸いた。ソウル君が最初に話しかける。

ヤト君は私に見せたように袖を捲ると、元通りになった腕を見せた。思わず二度見してしまうほどの。

ソウル君が目を丸くさせているのを見て、ヤト君はおかしそうに笑っていた。本当に、楽しそうに。



「それじゃ俺は今日は大人しくしてればいいんだな」

「サッカーやるだろ」

「おまえはまだまだ全力を出せていないんだから、主導権はおまえに託す。サッカーでもバスケでもどんどん点数決めてくれ!」

「んなことしたら酸欠で死ぬ」

「あははそりゃ失敬」



男子の会話は聞いていて笑えてくる。本人たちはいたって真面目に話しているのにその内容はくだらないときが多い。でもそんなコミュニケーションを通してだんだんと公私を分けられるようになるんだろうな、と私は不思議に思う。女子はそれが複雑すぎて、上っ面だけの付き合いになったり薄っぺらい付き合いになったりしがちだ。

グループを組んでいるのに、実は嫌いな者同士が集まっていたってことも珍しくない。それに対して男子は表裏がないから嫌いなやつはとことん嫌いだし、気が合うやつとはとことんいつまでも付き合いを大事にする。


どうしてそんな似ても似つかない異性が恋愛なんてできるんだろうとたまにわからなくなる。

そんなだからイケメンの類いに心を踊らさないのだろうか、と客観的に自分のことを分析してしまえる自分がここにいて幻滅する。

恋愛をしてみたくないわけじゃないけど、そんな気分にはならないしそう言う目で見られないのは、なんだか女子としてどうなのって悩まないわけじゃないけど……

でもやっぱり恋愛なんて自分とはかけ離れたことなんだろうなって、自分の性格に同意する。私は所詮私でしかないから。



「今日も忙しいの?」

「うん。得点係だし。今度はサッカーなんだ」

「先輩の?」

「うん」



実はその試合にはアラン先輩が出るのだ。しかも対戦相手にはソラ先輩がいる。これは見逃せない試合なのだ。

どちらを応援すれば……って得点係がこんなこと考えちゃダメなんだけど、考えてしまう。

いっそ、両方とも応援してしまおうか。



「今日も勝って優勝するぞー」

「優勝……できるかな」

「できるかな、じゃなくてできるの!やるのよ勝つために!」

「燃えてるね」

「火だからね!」



今にもその長い髪が赤く燃え盛ってしまうのではないかと言うぐらい気合いじゅうぶんなユラ。その元気が空回りしないといいんだけど。


そして、球技大会二日目が始まった。



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