Candy of Magic !! 【完】
終了のホイッスルが鳴り響く。結果はアラン先輩のシュートが決定打となり5組の勝利。ソラ先輩はしきりに悔しがっていたけど、アラン先輩に近づいてその背中をバシバシと思いっきり叩いていた。
アラン先輩は迷惑そうだったけど、やりきったという清々しい表情をしていたから、褒められたのかもしれない。
敵は敵でも、生徒会の仲間だから。
でも私はその光景を見た後、すぐに体育館へとダッシュした。バスケの試合は?!
気になって気になって仕方なくて、靴も履き替えずに体育館に着いたら靴下で歩いた。上履きに履き替えてまた体育館履きに履き替えるのはかなりめんどくさいと思ったから。
でも、たどり着いたときはもう時すでに遅しで、ちょうど終わってクラスメートか飛び上がって喜んでいるところだった。
ということは勝ったんだな……よかった。
次には決勝が待っているんだけど、その歓喜の輪に入りづらくて体育館の出入口で立ち往生してしまった。
ヤト君はメンバーから絡まれていて迷惑そうだけど、歯を見せて笑っているから凄く嬉しいのが窺える。でもそうなる過程を私は知らない。
……また、疎外感。輪の中に入れない。
別に皆が悪いわけじゃない。もちろん生徒会の仕事が悪いわけじゃない。でも感じるこの疎外感は……
誰にも気づかれない。誰にも気づいてもらえない。
ぽつんと突っ立って眺めていると、足元に感触を感じた。見下ろせば赤いネコが足に絡み付いていた。脇腹を擦り付けて来る。
やっぱりね……マナだけは私に気づいてくれる。
赤いネコに感謝しつつ、静かにその場から逃れた。私がいなくても来ていたとしても誰も気づかないよね。
とぼとぼと靴を片手に、靴下で歩いて下駄箱に向かっていると、後ろから赤いネコが追い付いて来て目の前に座った。なんだろうと思ってしゃがみこんで眺めていると、今度は誰かが走って来る音がした。
そっちを見ると、はにかみながら走って来るヤト君が目に入った。立ち上がって待つも、なぜかはわからないけど反射的に顔をそらす。
「なあ、なんでいなくなるんだ」
「……別に」
「俺、スリー決めてやったんだ!先輩も褒めてくれてさ」
「……良かったね」
「なんか、愛想悪くね」
「さあ」
なんでこんなにも素っ気ない態度を取ってしまうのかわからない。バカだなって思う。でもしてしまうんだ。
これ以上そんなキラキラした目で見ないで!
私がその視線から逃げようと踵を返すと、がっしりと腕を掴まれた。
でもがっしりと掴まれたにも関わらず、私は思いっきりそれを振りほどいてしまった。
「触らないで!」
言ってしまってから後悔する。なんでむきになってるの?たかが皆と気持ちを共有できなかったからって、同じ光景を見られなかったからって……
ヤト君に当たる必要なんてないのに。
「おい……」
「ごめん。決勝はちゃんと行くから……だから……」
───今は構わないで。
それを言ってから小走りにその場を去る。ネコもヤト君も追いかけて来ない。ちらっと見えたヤト君の眉間にしわを寄せた顔が目の前に交錯するけど、それを振りきるようにさらに走る。
靴下だから足音はうるさいしかかとは痛いし最悪だけど、ヤト君を襲った私からの衝撃に比べればこんなの屁でもない。
どうしてあんな態度を取ってしまったのだろうか。