Candy of Magic !! 【完】
そうだ、飴舐めよう。精神安定の効果があるって言ってた。
飴は教室にあるから取りに戻らないといけない。取り敢えずは上履きを履いて階段をかけ上がる。
早くどこか遠くへ……皆から逃げないと。
でもそんなの矛盾している。輪の中に入りたいのにそこから自ら逃げるなんて。でも今さらどんな顔を見せればいいかわからない。ヤト君にもあんな態度取っちゃったし。
教室にたどり着いて机の中から飴の入った袋を取り出す。それをひっくり返すと机の上にカラカラカラと飴玉が転がった。その中のひとつが机から転がり落ちてコトンと音を立てる。
それを拾おうと腕を伸ばすと、その飴玉は綺麗に真っ二つに割れていた。
私が先生にリクエストして作ってもらったラムネ味の飴。実は味はどうでも良くて、私はこの透き通った水色を見てみたかったのだ。
マナの青色……夢に出てきた龍の色。それが壊れてマナの世界が破滅して……
最期に残るのは、いったい何?
力の使えない私は普通になれる?魔法の源であるマナがいなくなって皆は力を失う?そうなれば私は疎外されなくなるの?それって私の利益?
『 私たちを救えるのは、あなただけ。末裔は選ばれし人の子』
『剣と鈴、そして翼』
私だけが救えるの?そもそも、なんでマナの世界が破滅するの?もう、わかんないよ……何もかも……
私は割れてしまった飴を力なく拾って包装から取って口に含む。
甘いラムネの味。
袋にすべて飴玉をしまうと、もとの位置に戻して教室を後にした。ふらふらと誰もいない廊下を歩く。
口の中はラムネの味。安らぎを与えてくれるであろうその飴は……なぜか私から気力を奪う。
今もその色を私の口内で保てているのだろうか。
ぼーっと何も考えずに歩いていたから、前から来た人に全然気づかなかった。それになぜか私のことを避けずにその人は私にトンとぶつかる。
避けることも謝ることも億劫で、立ち止まったまま停止していると頭をポンポンとされた。
いったい、何が起きているのか。
「やはり、おまえは変わらない」
その声は……アラン先輩だ。でも、言葉の意味をいまいち理解できない。
「別のやつかと思ったが同一人物のようだからな。それにそんな風になるからほっとけないないんだ」
だから、何が言いたいの?
私は大して入りもしない力を振り絞って顔を上げると、アラン先輩の顔が目の前に迫っていた。
「俺たちは一度、会っている」