Candy of Magic !! 【完】
「それにしても、静かだな」
「そうですね」
「生き物の気配がまったくしません」
出発してからしばらく経ったけど、景色は一向に変わらない。星の位置が少しずれているのはわかるから進んでいるのは確かなんだけど、行けども行けども木ばかり。地形が変わったりとか、生えてる植物が違ったりとか、そういうことが一切見られない。
こういうところで遭難しやすいんだろうな。
「このまま何もなかったら脱水症状で倒れるぞ」
「そう言われても……何もありませんよ」
「水……水……水……それなら、音?先輩、属性が水なら何か感じないんですか」
「無茶言うな。おまえの言う音も何も感じられない」
「そうですよね……」
せめてあの犬がいれば水のあるところまで案内してくれたかもしれないけど、それは今は無理。いないんだから。
とにかく何でもいいから目印とかあればいいのにな……
と、突然耳鳴りが鳴り出した。キーンと頭の髄まで轟くような鋭い音。思わず踞る。
「ど、どうした」
「先輩……?おまえ、大丈夫か!しっかりしろ!」
「耳鳴りが……あ……うっ……」
意識が遠退いていく。思考を遮断される。言葉も空気を噛むばかり。揺さぶられるけど、それは逆効果……
ぐるりと視界が暗転して、そのまま目を閉じた。
『剣と鈴、そして翼。指輪は鍵』
指輪は鍵、それが頭に強く残される。