Candy of Magic !! 【完】
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ヤトside
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「ソウル、おまえ本当に違和感ないな」
「よし、じゃあカップルやるか!」
「やめろ」
ミクとユラと別れてから数分。ソウルと並んで廊下を歩いていた。ソウルは女子の制服を着て堂々と歩いている……少しはその厳つい歩き方はどうにかならないのか?まさに男子の歩き方だぞ。
ソウルを茶化すと、悪のりして腕を絡ませてきたからべりっと剥がした。マジで気持ち悪いからやめろ。
ソウルはかつらの髪を振り乱して笑いながらえー、と抗議した。だからやめろ気持ち悪い。
ふざけあっていると、スタンプの台紙を持っている人を見かけた。ソウルに真面目にやれ、ドン引きされるぞ、と脅してやった。ソウルはとたんに静かになる。
ナヴィ校の印象を悪くさせたくない。
「おまえ案外真面目なのな。最初はもっと不良だと思ってた」
「あ?」
「だーっ!それだよそれ。その不機嫌そうな顔。それが寄せ付けないオーラむんむんで嫌だったんだよ」
「知るか」
「それが今では丸くなって?笑顔も見せて?王子呼ばわりぐはあっ!」
「うるせー」
俺は一発蹴りを入れた。ソウルの苦手なすね。足を押さえて踞っている。俺はそれを頭上から眺めてほくそ笑んでやった。
「ひでーよヤト……いてーよヤト……」
「なんとでも言ってろ……じゃあ、休みを与えてやる。アイス買ってこい」
「あ?ああ……あれか。結構並んでるね」
「今日は暑いからな」
アイスはすぐ近くにあった店だ。10分待ちぐらい。
ソウルにおまえ暇だろ?それなら並ぼうぜ、と提案された。まあ、奢ってもらうっていうのは半分冗談だからいいか。
それに、あの試合にソウルは出てなかったしな。
最後尾に二人で並んで待つ。
「おまえ廊下側に並べ。俺は壁側に並ぶから」
「なんで?」
「俺が女装したやつ隠してどーすんだよ」
「あー……そうだった。俺ターゲットだったわ」
「自覚なしかよ」
「少し膝がスースーするな、って感じ」
「いや、意味違うから」
それはスカートのことだろ。企画に貢献するっていう自覚をもっと持てよ。
別に誰もスカートの感想なんて聞いてねーよ。
「ん?あれは……」
「エネ校のご到着だ。おまえ気を付けろよ、その格好じゃ何言われるかわかんねーぞ」
「はいはい」
エネ校の数人がこっちに歩いて来た。ソウルは少し俯き加減で対処する。スタンプはあくまでも一般人向けだ。エネ校は当初は企画外だったんだからな。おまけだおまけ。
他校に愛嬌を振り撒く必要はない。
──────ふっ。
「おまっ!鼻で笑うなよ鼻で!」
「誰も気づかねぇ……クククッ」
「俺だって傷ついたわそりゃ!ひとりぐらい気づいてもよくね?俺ってそんな女々しいか?」
「いや……かつらのせいだ。あとはおまえの色白さ」
「すみませんねー運動部なのに館内ですみませんねー」
「それは俺だって同じだ」
「ヤトは海行っただろーが!反則だ反則ずる休み!」
「なんとでも言ってろ。つか黙れうるさい」
エネ校のやつらはこっちに見向きもしなかった。普通に素通り。それを俺が思わず鼻で笑うとソウルが憤慨した。
うっせぇから黙ってろ。近所迷惑だ。
「ヤトって……ドS?」
「ソウルはドM」
「それはない」
「それはこっちの台詞だ」
そうこうしていると、アイスを買うことができた。生徒がやってるから少し不恰好なソフトクリーム。俺はバニラでソウルはイチゴ。
……似合うな。やけに。
「おまえ今不謹慎なこと考えてただろ」
「いや、別に」
「俺はイチゴが好きなんだよ。文句あるか?」
「異議なし。よそ見すると落とすぞ」
「うえいっ!」
……鼻にクリームがついた。