悠久幻夢嵐(2)-朱鷺の章-Stay in the Rain~流れゆく日々~
3.転校~気に入らないヤツ~
春休み終了後、神前悧羅の昂燿校へと
再び戻った俺は昂燿の寮内のパソコンから
セキュリティーを掻い潜って学院内の情報をハッキングする。
足跡が付かないように気を付けながら。
この学校に通う学院内の生徒の情報は
トップシークレットになってるものも多い。
その中から【徳力】に連なる苗字に絞って調べていく。
複数の徳力名簿の中から見つけ出すことが出来た徳力神威の名前。
*
徳力神威。
神前悧羅学院昂燿校入学。
初等部より海神校内部転入。
高等部三年間 外部校転出。
*
顔写真や家の情報を確認した後、
そいつの経歴にも似た、学院での痕跡を追いかけて行く。
一通り、徳力の家柄の事を調べ終わる頃、
俺自身のハッキングに気がついた学院以内のシステムの
自己防衛プログラムが作動していく。
一瞬のうちに消失していく画面。
慌ててキーを叩いて、そのシステムから抜け出すと
USBを引っこ抜いて一息ついた。
もう何処にも俺が嗅ぎ回った足跡はついていない。
徳力の当主が学院には居ない。
だったら俺がこの場所に居る必要もないか。
ベッドにそのまま転がって携帯を引き寄せる。
表示ざせるのは倉智。
入学式を明後日に控えた俺は、
そのまま倉智へと転校手続きを依頼した。
アイツが向かったその学校へ俺も出向いて見極めてやるよ。
心の中は、いろんな感情が渦巻く。
だけど……何故か、そんなアイツとの出会いを楽しみに待つ俺自身も
そこには存在する。
寮に入ったばかりだが高等部の間、
転校する旨をKINGと呼ばれる昂燿校の寮長へと告げると、
そのまま俺のデューティ-の元へと足を向ける。
この学院、神前悧羅には彩音紫【あやね ゆかり】理事長が取り入れた
HBW【ハウス・ブレイン・ワーク】制度と言うものがある。
デューティーは指導する側。
ジュニアは教えられる子供。
デューティにとってのデューティは、
俺にとってのシニア・デューティー。
そしてそれぞれの縦割グループの中の代表が
グラン・デューティーと呼ばれていた。
俺の場合のグラン・デューティーは今年度の昂燿寮長のKING。
そしてデューティーは今から向かう琉崎樹羅【るざき いつら】。
大女優の息子で自分自身も俳優業とモデル業で芸能界を活躍している。
「デューティ樹羅、朱鷺宮です」
「いいよ。入って」
中から声が聞こえて室内へと体を滑り込ませる。