悠久幻夢嵐(2)-朱鷺の章-Stay in the Rain~流れゆく日々~
村に鳴り響くサイレン。
そのサイレンは、
村がダムの中に消え始める合図。
その瞬間をそれぞれは、
心痛の面持ちで迎えて
故郷との別れを告げていく。
神輿の中から
順番に外を眺めていくものの、
そこに……陸奥の姿はなかった。
アイツ……。
本来のタブーを破って、
慌てて神輿から飛び出すと、
動きにくい衣装のまま、
山辺に向かって駆け出していく。
チクショー。
やっぱ、動きにくい。
走りながら、
なるべく軽装に
動きやすくなるように
天冠をはじめとして脱ぎ捨てていく。
「ご当主」
「神威っ!!」
村人たちの動揺の声などを
背後で感じながらも、
この歩みを
止めることは出来なかった。
アイツが……
山辺と共に
その命を
終わらせようとしている気がして。