悠久幻夢嵐(2)-朱鷺の章-Stay in the Rain~流れゆく日々~
その場で、万葉に連絡をつけて
再度、村人たちの現状を調査するように
メールを送った。
「お前さ、
住み込みで徳力で働く気ある?」
「住み込み?」
「そっ。
やること多すぎて、体足りないからさ。
まっ、自信ないなら無理強いはしないけどな」
わざと焚き付けるような口調で
言葉を投げかけると、
陸奥は売り言葉に買い言葉のようなノリで
挑戦的に頷いた。
その後、久松の車に乗り込んだ俺は、
マンションへと帰宅した。
地下駐車場に車が滑り込んだ途端、
お辞儀をして車を開けるドアマン。
荷物を預けて、
そのままエントランスに向かうと、
受付の係が深々とお時期をする。
会釈を返して、
彫が施されたエレベータに乗ると
最上階へと浮遊した。
最上階で、エレベーター側から
指紋認証で、鍵を解除すると
ゆっくりとドアが開いた。
「うへぇー。
お前さ、なんて家に住んでんだよ」
なんてぶつくさいいながら、
俺の後をついてくる。
玄関の鍵を、顔認証で解除すると
部屋の中に入った。
そのまま自分の部屋に直行すると、
夜の対面用の着物に袖を通す。
「あのっ……。
お茶、いれようか?」
居心地悪そうに声をかける陸奥。
「何?お茶?」
そのまま手元の机にあるボタンを押して、
エントランスの受付へと
お茶を注文する。
すぐに運びこまれたお茶に、
陸奥は、崩れ落ちるように脱力した。
「なぁ、やっぱ……
お前、次元が違いすぎるよ。
お茶くらい、
自分でいれんだろ?」
当然のように紡がれた言葉に、
固まるのは俺の方だった。
「そこっ、固まる方かよ。
って、こんな立派なシステムキッチンが
完備されてて、お茶すらまともにいれらんねぇ
奴が生活してるとは……」
呆れたように陸奥は呟いた。
とりあえず……
下から運び込まれた、お茶を飲み干す。
鳴りだした携帯電話にでて用件を聞くと、
そのまま玄関に向かう。
「なぁ、今度は何処行くんだ?」
「お前の部屋」
そう答えた俺に、
陸奥はやっぱり溜息をつきながら
ついて来た。
彫のあるエレベーターで、
一階まで降りると
反対側の彫のないエレベーターに
乗り換えて、25階へと向かった。
「20階までは、一般にも開放している。
21階から30階までは、
安部村の人たちが中心に住んでいる。
30階以上は、向かい側のエレベータのみだが
飛翔の仕事仲間や、徳力の関係者が生活している」
説明しながら、
25階へ到着すると2507部屋のドアを開いた。
「神威さま」
村人たちは、名前を紡いで深々とお辞儀する。
「アンタ、陸奥村長のとこの……。
一緒に住みなさるか?」
あっと言う間に囲まれた、
陸奥は7年たっても尊重の孫として人気のようで
瞬く間に、囲まれた。
「陸奥、これが部屋の鍵。
すぐに荷物を運び入れるといい。
明日、通学時間に」
そう声をかけると、
深々とお辞儀をする
村人たちの前を歩いて1階へ。
そのままエレベーターを乗り換えて、
早城家へ。
早城の飛翔の両親にも、
退院して来た旨を告げて、
自室へと戻った。
病院で散々眠り続けたはずなのに、
今も体が重くて、疲れやすい。