悠久幻夢嵐(2)-朱鷺の章-Stay in the Rain~流れゆく日々~
「なんだ神威。
今日はやけに甘えたがるな……。
確かに……幾ら、
一族のことが中心で
当主としての役割があるとは言え
神威が私の自慢の息子であることは
違いない」
父さんと一緒に、
総本家へと歩いて帰りながら
吐き出す言葉は……
ずっと胸に抱き続けている言葉。
「父さん……
俺、飛翔に逢いました」
そう言った俺に、
父さんは目を細めた。
無論……父が生きていた時代に、
俺が飛翔を知っているはずもない。
なのに……
「そうか……。
飛翔に逢ってきたか?
小遣いくらい貰ってきたか?」
なんて言いながら、
父さんは大きな手で俺の髪を撫でた。
「父さん……。
ずっと謝りたかったことがあるんです……。
俺が生まれたから……
俺なんかの父さんになったから……
父さんは……あんな目に……。
母さんを殺したのも……
父さんを殺したのも……
俺です……。
だから……」
許して欲しいわけじゃない。
罪が消えて欲しいわけじゃない。
俺が知らぬ間に犯した罪は
軽いものでも忘れていいものでもない。
ただ受け入れて……
忘れずに生きていくしかない烙印。
許されるはずがない罪ならば、
もっと追い詰めて
……責めて……
俺自身を……。
そう望んだ途端に、
闇は囁く。
『全ては望むままに』
次の瞬間、
家族の団らん風景は遠のいて……
変わり果てた母と父が
俺に恨みの言葉を連ねながら
じっくりと近づいてきて、
その首に……4つの手がかかる。