悠久幻夢嵐(2)-朱鷺の章-Stay in the Rain~流れゆく日々~

11.宮から遣わされし者





華月から連絡を貰ったその日、
俺は神前での精密検査を終えて
飛翔と共に総本家へと向かった。





精密検査を重ねても、
原因が出てこない。





だがあの後も、
何度か仕事の最中に倒れ続けた俺に
誰もが過剰反応していた。




「疲れてないか?」



総本家へと車を走らせる車内、
飛翔が呟く。



「今日は多少マシだよ。

 そっちこそ、原因の一つでも
 データーに出たのかよ。

 人を散々、
 検査詰めにしやがって」


「いやっ。

 データーに出ないからこそ
 問題なんだ。

 心停止や、貧血に似た症状に
 陥りながらも、検査をしても
 それが結果に現れない。

 現れてくれた方が、
 治しようがある」




そうやって毒づいた飛翔の言葉の
裏側に潜む、罪悪感にも似た
波動が(声)に乗って俺の元に届いた。




「総本家まで、
 隣で寝てていいか?」


運転するソイツに問いかけると、


「好きにしろ」っと言いながら、
さりげなく、
車内に流れる洋楽のボリュームを
ハンドル付近のリモコンを
触って小さくした。




少しずつ変わっていく
俺を取り巻く環境。




その環境が巡り続けて、
似たような痛みを抱える奴の負担が
少しでも消え去ればと感じた。



飛翔が近くに居るのを感じだけで、
何故か、いつもより
安心して眠れるような気がした。

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