悠久幻夢嵐(2)-朱鷺の章-Stay in the Rain~流れゆく日々~


昔、柊と櫻翼は学生時代に想いを寄せあった。



生駒の家は女傑族。


姉である柊は、
家を継ぐことを課せられた存在。



それでもその恋の炎は
消えることはなかった。



そんなある日、家の定めに苦悩したまま
蒼龍との契りを交わすこととなった柊は
カムナと呼ばれる闇に飲み込まれそうになった。




その中に飛び込んで心を寄り添わせ、
体を重ねて引き戻したのが櫻翼。



そんな姉の心を知って、
家を受け継ぐ決心をしたのが、
生駒現当主である柊の妹。




柊はただ一度の交わりで
懐妊し夕妃を出産したものの、
生駒は次第にカムナに包まれるようになった。


そのカムナの闇から夕妃を守るために、
櫻翼は生まれたばかりの夕妃を連れて
徳力の地に足を踏み込んだ。



櫻翼は夕妃を姉夫妻に託して
徳力の地にカムナの呪いを持ち込むことを拒んで、
闇寿にその命を奪う手助けをして欲しいと頼んだ。



闇寿が預かるのは、当主と御霊分をした存在のみが
振るうことが出来る一族に伝わる剣。



その剣にて断ち切られた御霊は、
その剣の加護により、望むままに地上に
留まり続けることが出来ると言う。



そんなバカみたいな昔話を信じて、
その命を自ら望んで断たせた櫻翼。



その望みを叶えて、
自ら罪人となる道を選んだ闇寿。


その二人が選び、守り抜いた未来が
夕妃と蓮吏をカムナから守り続ける。


その妻である、
柊の最愛の望みを叶えるために。




そうやってカムナから守った夕妃。



だけど生駒の悲劇それだけで
終わらなかった。


当主に就任した、現当主は
カムナの呪縛に捕らわれたまま
今も抜け出すことが出来ず
生まれて間もない、
娘の命を狙っているという。




柊によって語られた生駒の内情は、
俺が想っていた以上に凄まじい状態だった。




徳力にしても、生駒にしても
めちゃくちゃだろう。



そう煮え切れない感情が渦巻きながらも、
俺たちは、この生活から自らを脱却させる術を知らない。


だからこそ、順応しながら
その在り方を模索していかなければいけない。


愚かな柵は俺の代で終わらせたい。



そう思わずには居られなかった。




「柊殿、アイツは?
 涼夜はどうしたら助けられる?」



生駒の話題を聞き終えた後、
タイミングを計って尋ねる。
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