悠久幻夢嵐(2)-朱鷺の章-Stay in the Rain~流れゆく日々~




「神威、お前が意図的にカムナを寄り付かせているのは
 薄々気づいてた。

 誰一人、責めるものがいない世界で
 アレは唯一、優しく責めてくれるだろう。

 俺もそうだった。

 兄貴が居ないと前に進むことは出来なかった。

 神威はどうしたい?
 一族を背負うか?」




床から体を起こして、
俺の目を真っ直ぐに捉えた飛翔。



「決まってる。
 俺は徳力を継ぐ。

 こんな想いをするのは俺で最後にする。

 違うか?」




そう。


この宿命が逃げ出す選択肢は
俺の中には、何処にもない。



「なら真剣に向き合ってこい。
 カムナを退けて雷龍に認めさせろ。

 
 お前が兄貴の後を自分意志で継ぐと言うなら、
 俺もお前の為に出来ることを誰の為でもない、
 俺自身の為にやり遂げる。

 
 御霊分け。

 俺の命の半分はお前にくれてやる。

 
 兄貴にとっての闇寿のように」





思いがけぬ言葉を継げた飛翔は、
何故かとても穏やかな表情をしていた。 




「……飛翔……」


「涼夜、助けるんだろ。

 だったらとっとと試練を越えてこい。
 兄貴の代わりに俺自身がやるべきことをしてやるよ」




そう言うと飛翔は再び護符を手にして、
ゆっくりと目を閉じた。

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