悠久幻夢嵐(2)-朱鷺の章-Stay in the Rain~流れゆく日々~
18.未来を誘う長として
鏡を辿って踏み入れた世界。
その世界で俺は龍の背に乗って移動していた。
……何だよ……。
ありえねぇだろ。
こんな体験……。
内心毒づいた俺に、
流れ込んでくるのは深い心。
『我、主よ』
「お前……もしかしなくても、
雷龍?」
『いかにも』
その龍は暗闇の中、スピードを更に加速していく。
加速はすれども、障害になりそうな風圧は
不思議なことに感じられない。
「貴咲。
朱鷺宮、涼夜を探せ」
告げると龍は急旋回を遂げて、
体をうねらせながら一気に地上へと降下していった。
視界に映ったのは、
血の色なく、横たわる涼夜の姿。
慌てて龍の背から飛び降りて、
地上へと着陸する。
かなり高いところから飛び降りたにも関わらず
着地による衝撃が俺に伝わることはなかった。
何かが俺を包み込むように、
穏やかな金色の気が包み込む。
「朱鷺宮っ!!」
見つけた涼夜を引き寄せて声をかけるものの
アイツは何の反応も返さない。
「涼夜っ。
起きろよっ!!」
叫ぶように体を揺するも、
涼夜は動かなかった。
「影宮。
雷龍さま、こちらへ」
そう言って俺たちを呼び寄せたのは
何時の間に辿り着いたのか、
俺を鏡の中へと誘った咲と和鬼。