悠久幻夢嵐(2)-朱鷺の章-Stay in the Rain~流れゆく日々~
俺を守る砦のように常に俺を守り続けた
幼い俺のように……。
「涼夜、もういいぞ。
こっちに来いよ」
必死に空を睨み続ける少年涼夜に
ゆっくりと手を伸ばしながら話しかける。
「お兄ちゃん、誰?」
「神威。
戻ってきたら、わかるさ」
伸ばされかけたその小さな細い腕を
しっかりと掴んでゆっくりと引き寄せる。
そして少年涼夜を取り囲む闇の気を、
宝剣の力で一気に薙ぎ払った。
天から降り立った雷光は、
雷鳴を轟かせて一気に弾けとぶ。
天からの眩しい光が
まっすぐに射しこんだ真下。
幼い少年涼夜は俺に手を振りながら、
横たわる涼夜の元へと消えて行った。
直後、龍へと姿を変えた咲貴は俺を背に乗せて
天高く舞い上がっていく。
何処までも高い天へと。
天を突き破って飛び出した感覚。
俺は鏡の前に立っていた。
「お帰りなさいませ」
「宝さま、お戻りなさいませ」
華月と月姫の声が俺を迎えいれる。
その後ろ、声に出すことなく
紡がれるのは『おかえりなさい』と囁く
桜瑛の声。
「華月、涼夜が……」
闇寿の声に慌てて広間から
アイツが眠る部屋へと移動した。
「起きたか?」
「あぁ」
「お前が影宮とは世も末だな」
憎まれ口は相変わらずで。
「華月、飛翔は?
鷹宮から連絡があったか?」
「えぇ。
先ほど飛翔も目覚めたようです。
鷹宮に行かれますか?」
「あぁ」
「ご当主……」
「言わなくてもわかってる。
体に異常がないか、
精密検査をって言うんだろ。
俺はあっちでして貰うよ。
涼夜、後でな。
もう少し、お前も休めや。
俺にしても、華月や闇寿にしても
お前を利用しようとは思ってない。
ただお前の意思で徳力を手伝おうと思うなら、
好きにしろや。
徳力なんざ、
モノ好きの集まりだからな」
そう言った俺に、
笑いながら告げた。