悠久幻夢嵐(2)-朱鷺の章-Stay in the Rain~流れゆく日々~
「朱鷺宮様、神威はこの春より私の従兄弟、早城飛翔(はやしろ ひしょう)の
母校でもある香宮学院へと転校いたします。
神威に興味がおありでしたら、そちらに出掛けられてみてはいかがですか?
朱鷺宮様が、神威と良き関係を構築して頂ける日を私もお待ちしています」
華月はそう言うと深々とお辞儀をした。
御簾の中から三人を見送って八瀬の者が担ぐ籠で、
朱鷺宮邸まで戻った時には、もう夜になろうとしていた。
「倉智、部屋で休む。
半時を待ってダイニングに行かなければ、
俺は就寝したと思ってくれ。
片桐には目が覚めたように食べやすいように支度を頼む」
口早に告げると、引きこもるように自分の部屋へと入り、
内側から鍵をかける。
紋付き袴を脱いで、
そのままベットに倒れ込む。
倉智の言った自由と拒否権のない未来。
この二つの相容れない存在に流される俺自身。
俺は……俺自身は何を望んでいるんだ?
答えの見つからないまま春休みは過ぎて行った。