「 」で出来てく物語
ほら、11



【リンゴ5コ分の強さ】



男の子「うぅー……重いよお……はぁ、持てない」


女の子「……どうしたの? なんで道にしゃがんでるの?」


男の子「えっ……」


女の子「どこかイタイ?」


男の子「(お、女の子……何年生だろう……可愛いなぁ)」


女の子「わたしヘン? 顔になんかついてる?」


男の子「あ……ううん」


女の子「そう、よかった。さっきまでお友だちとチョークで絵をかいてたから」


男の子「そうなんだ……」


女の子「具合、わるくなさそうだね。疲れたの?」


男の子「お母さんに、リンゴ頼まれて……5コ。この袋」


女の子「わぁ、おいしそうな赤いリンゴね。こんなにたくさん、1人で買ってきたの?」


男の子「……ぅ、うん」


女の子「すごいのね男の子って、力もちだ」


男の子「ぜんぜん違うよ……ボク、力もちなんかじゃないし……すぐ泣くし……弱虫だし……」


女の子「へー、そうなんだ。じゃあ、やさしいんだね」


男の子「え?」


女の子「弱虫さんはね、弱いから弱虫じゃないの。やさしいから傷つけたくなくて、周りの子に強いこと言えないんだよ。やさしいから悲しくなってほしくなくて、周りの子に勝ちをゆずってしまうんだよ」 


男の子「それって……いいこと?」


女の子「もちろん。強虫なんて聞いたことある? ないでしょ。結局みーんな弱虫なの、みんなやさしいの。だからキミも弱虫であたりまえ。強虫な人なんていないの」


男の子「キ、キミも弱虫……?」


女の子「もちろん」


男の子「そっか……そうなんだ」


女の子「さぁ、そろそろ立てる? お母さんきっと待ってるよ」


男の子「う……うん!」


女の子「リンゴ5コに負けちゃダメよ」


男の子「負けないもん……」


女の子「ふふ、がんばれ弱虫」


男の子「なんか応援されてる感じがしないなぁ……」




女の子の母「シロちゃん? ちゃんとチョーク片付けなさい。そろそろおやつよ」


女の子「あ、ママだ。わたしそろそろ行くね」


男の子「えっ……あ、うん」


女の子「じゃあね」


男の子「あ、あの……!」


女の子「……うん?」


男の子「あ……な、なんでもない……バイバイ!」


女の子「えーヘンなの(笑)バイバイ」







男の子「(僕もシロちゃんって呼ばれてるんだよ……なんて、言わなくてもいっか。もう、会わない子だろうし)」




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