「 」で出来てく物語
【届かぬ先で触れた体温 未来】
桜子「あ、あの資料使う?」
桐生「あぁ、確か窓側の棚に……」
桜子「取ってくるんで会長は座ってて大丈夫です」
桐生「え、でも……確か」
桜子「……っ」
桐生「……一番上の高いところにあるから、俺が取るよ」
桜子「だ、大丈夫よ……っ。取れるんで」
桐生「背伸びしてるのに届いてないじゃないか」
桜子「おかしいわね、縮んだかしら」
桐生「その言いぶりじゃ前は届いてたみたいな
表現だけど、藤咲さんいつもこの棚の資料取るとき届かなかったでしょ」
桜子「ほっといてください、ちゃんと取れるんで。今日は調子悪いだけで」
桐生「ほっとくとかじゃなく、今使いたいんだけど……」
桜子「もう少し……っ」
桐生「…………」
桜子「あ………」
桐生「これでいい? 届いたでしょ?」
桜子「こ、こんなのずるでしょ! 会長が取ってあたしの手に持たせただけじゃない!」
桐生「だって俺届くし……」
桜子「これは不正だわ……生徒の手本として日々働く生徒会にあるまじき行為……」
桐生「大袈裟だ」
桜子「……なんか良くわかんないけど、人に頼るのがあんまり好きじゃないのよ」
桐生「……どうして」
桜子「自分のためにならない気がして……」
桐生「……難しく考え過ぎじゃない?」
桜子「それは……自分でも分かってますけど」
桐生「君の周りには頼ってもちゃんと受け入れてくれる人がたくさん居るんだから」
桜子「…………」
桐生「俺もその1人だ」
桜子「……分かってます」
桐生「たまには弱いところ見せたっていいと思うよ。俺はいつでも藤咲さんの踏み台になってあげるから」
桜子「踏み台………」
桐生「うん」
桜子「会長って………Mだったのね」
桐生「……そういう意味じゃない」