「 」で出来てく物語



【虫にされたプロポーズ 未来】



春太「七世、髪に居座られてるぞ」


七世「?」


春太「ほら、ナナホシテントウ」


七世「あ……」


春太「逃がす?」


七世「……ううん。貸して」


春太「虫嫌いなのに? まぁいいや、はい。俺トイレ行ってくるわ」





七世「鈴木」


鈴木「何でしょう」


七世「手出して」


鈴木「犬のフンとかは嫌だよ」


七世「誰がそんなもんやるかよ」


鈴木「はい、ふつつかな手ですがどうぞ」


七世「手を嫁に出すのか。これやる」


鈴木「あ、ナナホシテントウ」


七世「髪にでもつけとけば。髪飾りになるぞ」


鈴木「えーなんでだろう。間宮くん虫嫌いでしょ、触れるの?」


七世「テントウムシくらいは別に。触れるって」


鈴木「ふーん。かわいいなぁナナホシテントウ」


七世「好き?」 


鈴木「ナナホシテントウ?」


七世「うん」


鈴木「好きだよ。ナナホシテントウも、ナナホシテントウくんも」


七世「……なにそれ」


鈴木「ふふふ。聞いて驚くなかれ」


七世「現代語を喋れ」


鈴木「小さいとき私、虫にね、プロポーズされたの」


七世「……良かったね、虫好きじゃん」


鈴木「うん。それでね」


七世「?」


鈴木「この高校に入って、なんであの時私が「ナナホシテントウ」って言いかけたら、そのナナホシテントウくんがビクッてしてたのか、分かったんだ」


七世「……そう」


鈴木「知りたい? なんでか」


七世「別にいい」


鈴木「もう知ってるもんね」


七世「……それ持ってどっか行け。虫女」


鈴木「自分で呼んだのに」


七世「……覚えてるなんて思わなかったんだよ」


鈴木「人生で初めてのプロポーズだったもん。覚えてるよ、ナナホシテントウくん」


七世「はいはい」




< 106 / 129 >

この作品をシェア

pagetop