「 」で出来てく物語
【傷だらけのつながり】
女の子「あー、はるるんおかえりなさい!」
男の子「ねぇ、その呼び方やめて」
女の子「だってみゃーアホだから、あだ名じゃないと覚えられないんよ」
男の子「(違う小学校で良かった……)」
女の子「帰ってきたらちゃんと手洗いうがいしましょうねー」
男の子「ていうか、またうちに来てたの? おじさんと一緒?」
女の子「パパが仕事のとこからもらったミカン、いっぱいあるからはるるんんちにプレゼントしにきたんだよお」
男の子「美弥は来なくても良かっただろ」
女の子「おうちに1人でおるすばんだと美弥は危ないからダメって、つれてこられた」
男の子「まぁ、確かに……」
女の子「この前はね、1人でおるばんしてたらお腹が減ったからピザ頼んだんだけどね、しばらくしたら知らない男の人が家の前で「小花さーん、小花さんいますかー?」って言ってて」
男の子「…………」
女の子「知らない人なのになんでこの人美弥のおうちと名字知ってるんだろうって、怖くて泣きながらおまわりさんに電話したのね」
男の子「…………」
女の子「ピザの宅配のおにーさんだった……」
男の子「そりゃそうだろ。仕事でピザの宅配きたら、小学生に泣きながらけいさつ呼ばれたお兄さんの方が泣きたいだろうよ」
女の子「ピザはおいしかった」
男の子「そりゃよかったな。ていうか、お前それどうしたの?」
女の子「それ?」
男の子「顔のバンソーコー。おでことほっぺ」
女の子「えーと……どうしたんだっけ……」
男の子「知らねーよ。忘れるな」
女の子「だって、顔だけじゃなくてお腹とか足にもたくさんあるからなぁ。ほら」
男の子「み、見せなくていいよお腹は……!」
女の子「みゃーアホだからさ、すぐどっかにぶつけたりしてしまうのよー」
男の子「あれだ……ぎゃ、ぎゃくたい……とかではないんだろうな」
女の子「ぎゃくたい? あはは、ないない。リビング行ってみゃーのパパ見てきなよお。危なっかしいみゃーのこと常に守ってるからパパの方が傷だらけだよお」
男の子「かわいそうに……お前、もっとちゃんと気をつけろよ」
女の子「でも、バンソーコーはるるんとおそろい。はるるんもたくさんはってるもんね」
男の子「おれは部活とかサッカーとかしてるから仕方ないの。美弥は女の子だろ」
女の子「女の子です」
男の子「あんまりアホするなよ、卒業しろ卒業」
女の子「えー、アホを卒業? できるかなぁ、高校生くらいになったらアホじゃなくなってる気がする」
男の子「おれ、お前と同じ高校はぜったい行かないからかんけーないけど」
女の子「えーさみしいこと言わないでよお! いとこなのにー」
男の子「いとこだからだよ」
女の子「?」
男の子「いとこだから、こうしてちがう学校行っててもちゃんと会ったりしてるだろ。だから別に高校だってちがくても、お前とのつながりは死ぬまであるの。わかった?」
女の子「うーん、わかんないけど。はるるんとみゃーはずっといとこってことね!」
男の子「……違うけど、それでいいわ」
女の子「みゃーのアホが治ったら、一緒の学校行こうね」
男の子「すげーやだ」